「男と女って難しんだね。
僕はあの子が好きなのに別の子が好きって言ってくるんだよ」
これは飲み屋の会話ではなく、古本屋のカウンターで悩める小学低学年男子から受けた相談です。
小学生と言えども男女関係は複雑なようです。
男女の世界からすっかり縁遠くなった聞き手は、J-POPの軽い展開よりは演歌の情念の世界になってくれればなぁ。
と勝手に思っています。
今日はそんな男女の駆け引き、騙し合いな絵本を一つ。
今日のオススメ絵本は
『おうじょとかえる』
(ジョナサン・ラングレイ 絵・再話 斉藤洋 訳 岩崎書店 平8)
です。
本の元々の話は有名な童話です。皆さまもご存知の。
『ジョナサン・ラングレイは、だれもが知っていて、みんな大好きなこの話に、ちょと手を入れ、でもだいじなところはそのままに、書きなおしました。
ウィットたくさん、
元気いっぱいの絵と文章をお楽しみください』
と絵本のカバーには書かれています。
他にも『あかずきんちゃん』『みにくいあひるのこ』などがシリーズにあるそうです。
ですが、この『おうじょとかえる』と言う話。
……かなり騙し騙されの世界で子ども向けじゃなかったような。
粗筋をざっと言いますと、ある国の末っ子姫でめちゃくちゃ甘やかされた姫が、遊んでいるうちに大事な遊び道具を池に落とします。
「びぇーん」と泣き叫んでいるところ(イライラポイント1)にカエルがやってきて、「どうしたの?」大事なものを落としたと言うと、カエルは数個約束してくれたら拾ってきてあげる。よし、よし、カエルとの約束なんてあとでぶっちぎれば良いのだから、好きなだけ約束してやるわ。(イライラポイント2)
遊び道具を取ってもらった姫はすっかりカエルの事を忘れますが、カエルからの催促により、約束を行使させられます。
「ほんとうに来ると思ってなかった。ぬるぬるしたカエルなんて嫌!」(イライラポイント3)
しかし、王に怒られて嫌々カエルを歓待した姫は、とことんカエルに辛くあたるのですが、最後キスをしたら、なんか美形の王子に戻っていつの間にか結婚してた。
(イライラポイント4)
なんでしょう。この何かの教訓を得ようとしてもイライラが先立ってなんにも頭に入ってこない、姫の馬鹿女っぷりは。
しかし、ふと思ったのは。
魔法にかけられてカエルになった王子は池に近づく者が居ないのでずっと戻れなかった。でも、ある日若さばっちり、可愛さばっちり、わがままだけどもそこは我慢。な姫が現れてはい、ラッキー。
この機会を逃したら、次はいつ人間に戻れるかわかりません。
かなり我儘で傲慢で性格悪いけど、姫だって言うし、上手いこと言ったらこの国の王様になれるかもしれないし、……しゃーねー。このオンナで手ぇ打っとくか。
馬鹿そうだから、約束を取り付けてキスまで持ち込んでやれ。
元に戻ったら美形の俺に惚れないわけないだろ。
そんな話にも読めないこともないのです。
男女の中は深くて、暗い。
そんな現実をまざまざと見せてくれる後味の悪さが、とても良いと思います。
一筋縄では行かないハッピーエンド、ですね。
大阪の古本買取は小店にお申し付けくださいませ。空堀通商店街の店頭にて、遠方の場合は出張・ご送付により買取りもいたしております。絵本・昭和史だけでなくあらゆるジャンルの文庫・新書・単行本、社会科学・自然科学・文学・美術その他専門書の査定と買取りをいたします。
〒542-0012 大阪市中央区谷町6-3-12 空堀通商店街 (谷町筋東側)
TEL/FAX06-6773-9360
(小川知里)